霧中に夢中、極上のエンターテイメント

 終わってみれば、4対1。だが、途中までは難しい試合だった。
 鹿島アントラーズFC東京カシマスタジアム
 アントラーズをリスペクトする城福監督率いるFC東京を迎えた上位対決は、逆サイドが見えないのではと思われるくらいの濃霧の中で行われた。*1
 ムービングフットボールを掲げる城福浩監督。だが、前半は東京がリトリート気味に試合を運ぶ。城福監督はときおりラインを上げるように指示していたことから、アントラーズが押し込んでたとも言える。だが、ひいた相手から点を奪うことは、日本代表をみるまでもなく、厄介な仕事でもある。この試合、曽ヶ端準塩田仁史の両キーパーが試合を引き締めた。濃霧の中、相当見えづらい状況で、時には、セーブ、時には飛び出して、と互いにその実力を発揮しあった。
 後半、東京は、負傷明けの長友佑都を投入、攻撃の活性化を図る。
 スローインからはじまるゴール前の混戦から、カボレが押し込んで東京先制。
 セルフジャッジ気味に一瞬足が止まったアントラーズ。曽ヶ端の懸命のプレーもかなわなかった.*2
「逆転勝利は失点しているということ。決していいイメージではない」との小笠原満男の言葉は重い。

 そして、「オズの魔法」が炸裂する。オズワルド・オリベイラ監督が、ダニーロ興梠慎三を同時投入。
 それまでバランスをとりながらひいた相手を攻めていた選手たちは、その監督の意図をよみとり、「ほんの少し」攻撃にバランスを傾ける。
 その「ほんの少し」が、ピッチ上の選手たちすべてが意識を共有することで、猛攻になる。
 ほどなく、本山雅志ダニーロがからみながらも興梠慎三が相手ゴール前でポストとなりマルキーニョスにスイッチ、得点王マルキがフィニッシュ!
 ダニーロ興梠慎三が調子が良いのならスタメンで...それはたしかにそうだ。だが、田代有三が相手にボディブローを与えたからこそ、中盤にスペースがうまれ、相手DFの足が止まり、その二人が活躍しやすい状況ができたと思う。*3
 そして、監督は、中田浩二をスタンバイさせる。アントラーズ復帰間もない浩二をここで投入(準備)とは、いかに監督が彼を信頼しているか、ということだ。
 中盤が間延びしはじめ、「殴り合い」モードに。だが、これすらも、アントラーズの得意な展開(苦笑)。「長友さんに代わってくれてよかった。前に出てきてくれるでしょ(中略)打ち合いになればうちが最強でしょ?今のメンバーを見れば」と内田篤人が語るように、いまのアントラーズの攻撃力は頼もしい。
 サイドで起点となったマルキからのボールに、相手CBの裏を疾駆した本山雅志が飛び込んで値千金の逆転弾を決める*4。前半、微妙なシュートチャンスに二度パスを選択し、後半もシュートを外したこの日の本山、ゴールにスライディングした仰向けなまま、空に向かってガッツポーズを決め、「ムービン・フットボール」の何たるかを城福東京に見せつけた。
ACL疲労からリフレッシュしたアントラーズは、この日も走った。前がもったら、誰かが追いこしてゆく。まるで早回しのビデオのように左サイドを疾駆する新井場徹、時には大外、時には切れ込む内田篤人*5、迫力満点の青木剛...。
守備でも、小笠原満男を筆頭に、奪われた後のファストディフェンスから、そのままカウンターにつなげたる圧巻ぶりで。
 
 そして背番号「6」を背負った中田浩二登場。エルゴラによると、(同点段階の)当初は3バックの前のボランチで入る予定だったとか。しかし、逆転後の投入となり(ぶっつけ本番!)のトレスボランチの真ん中、アンカー的な役割を担う。4バックの前の三枚の壁。その壁を前にもたついていると、最前線の興梠慎三らが「後方」からボールを奪いにいくという、抜け目のなさ。
 さらに慎三が力強さと思いっきりのよさをしめすナイス・ゴールと、ダニーロのとどめ弾。だが、そのダニーロのヘディングを生むコーナーキックも、曽ヶ端準の見事なフィードからマルキへわたったことが始まりだった。バックパス処理にもたつくイメージから、曽ヶ端は足下が良い、とは言えないかもしれないが、彼のパントキックがカウンターの起点でもあるわけで。

 終わってみれば、4-1。でも、アントラーズがなすべきことは、これからも多くて、長い道のり。ジーコ・ジャパンの崩壊とともに「古くさい」という烙印を押された我らがアントラーズのサッカー。たしかに、そう言われざるを得ないこともあった。だが、そのメンバーがほぼそのままで、ここまで良質のサッカーを展開している。そのことに気づかない一般メディアもまだまだ多い。彼らはスタジアムに足を運ばないどころか、Jリーグをテレビで見ることすらほとんどないのではなかろうか?

 上位との闘いが続く城福監督のコメントに目をむければ、一般メディアなどが描く幻想と真実との差が浮き彫りになるのでは?
 それにしても、FC東京のサポは謙虚でスガスガしい。監督の意図、チームが過渡的状況であることをふまえて、この一戦を受け入れている。
 「勘違いしない」この意識、このチームは強くなる...からうちは全力で叩くのだけれども。

さて、次節は、僕の好きなフォワード、柳沢敦がいる京都サンガだ!...ああ...せっかくの関西なのに行けなさそう...最近平日は残業がデフォルトだし、休みがとりにくくなったい!

*1:雪中で使うオレンジボールがほしいくらい

*2:少しサイドに開き過ぎのきらいはあるも、この日平山相太はよい起点となった...がさすがに疲れたか、後半は

*3:もちろん、有三、ダニさん、慎三、だれだって90分やりたいよね〜

*4:ファーにはちゃんと慎三が走り込んでました

*5:この日はキックオフ直後に軽いプレーも見られたが、その後はさすがの安心感