後ろめたいさよなら
先日、声優の川上とも子さんが亡くなった。
『ヒカルの碁』の進藤ヒカル役ともなれば、アニメをあまり観ない方でも、その演技に触れたことがあったのではと思う。
その訃報を職場での休憩中、twitterで知ったのだが、最初は目を疑った。
最近、お耳にかかってないな〜、と思っていたのではあるが。
そんな人気も実力も兼ね備えた川上さんであったが、僕は虚心になれないところがあった。
もう、ずいぶんと以前のことになるが、僕の好きな役者さんが、彼女にとって、TVシリーズとして初の主役に内定(?)していたのだが、蓋を開けてみればその座には川上さんが抜擢され、一方は脇役となっていた。
いまとなっては、脇役で演じた経験が、別の大ヒット作品の準主役に抜擢されることにつながったと思うし、TVシリーズの主役の座も別の作品で射止めたし、いまなお母親役から女子高生役まで活躍されていることを考えると、それはそれで糧となったかと思う。
もちろん、ご本人のお気持ちを知る由もないが、ファンとしては、複雑な気持ちになったものだ。
とは言え、さきほどあげた『ヒカルの碁』のヒカル役、『BLEACH』の砕蜂役などは、キャラクター自身としても、川上さんの演技も、僕は好きだった。
そう楽しみながらも、「過去」のことが一瞬よぎることもあり、川上とも子さんご自身を応援するには至らなかった。
いま、あらためてかみしめる。
川上さんは、僕と同じ年だったんだ。
川上さんは、部位は違えど、僕の母と同じ病気だったんだ。
川上さんは、僕の母と同じように、ベッドから蒼い空を見上げていたのかな。
緒方恵美司令のブログ ( http://emou.seesaa.net/article/209013867.html ) が痛い。
「くやしい。」
この一言が胸に突き刺さる。
もう20年も前になるけれど、僕がアメリカに行ったとき、多くの国の若者とふれあう機会があった。
「きみは何のためにアメリカに来たの?何のために学んでるの?」
僕は答えた。
「僕は偏見をもちたくない。いわば、自らの先入観を破壊していくことが、僕の趣味かな?」
そんなことを言い放った僕は、川上さんには色眼鏡をかけてしまっていた。
こんなことを気にかける、それは僕の思い上がりかもしれない。
でも、ほろ苦い思いはかわらない。
なぜなら僕は、彼女が生きている間に、吹っ切ることができなかったのは事実だから。
さらば、とも蔵。
僕は成長する。
それが、とも蔵への贖罪、僕なりのね