夢と現実

 先日、NHKの「サンデースポーツ」で、我らが鹿島アントラーズ小笠原満男選手にスポットがあてられていた。中田浩二が渡仏したいま、鹿島での存在はますます大きく、また、日本代表でも中心を担いつつある。先の北朝鮮戦で、大黒選手が投入された時、後ろから駆け寄って「ポーン」と背中を叩いて声をかけたところを観て、あの試合における自分の役割を、小笠原はわきまえていると感じた。
 さて、その北朝鮮戦、小笠原の評価はまっぷたつに割れた。それは専門家においても、一般の人たちの間でも関わらず、だ。方や、「MAN OF THE MATCH」級の扱い。方や、「得点をあげた最初と、アシストを決めたラスト以外は消えていた」と苦戦の原因に...。
 僕の評価は、「小笠原を責めるわけにはいかない」。あれだけボランチあたりでバタバタしたら、そうそう前で仕事はできません。MAN OF THE MATCHは、決勝点をあげた大黒だと思うけど、小笠原は奮闘したと思う。結果として、勝ったわけだしね。
 苦戦はするよ、相手だって必死だ。がんばってるのは日本だけじゃなし、進化をもとめるのも日本だけじゃない。
 さて、その「結果」だ。サッカー誌では、ジーコの采配を厳しい目で見ている。それが今後も続く、最終予選を危惧する観点からのものなら、ごもっともだと思う。しかし、僕が気になったのは、一部のライターが、「日本代表が、『結果重視』に陥り、サッカーが面白くない」みたいなことを指摘していたことだ。
 僕が思うに、ナショナル・チームは、「結果」が第一。ましてや、最終予選なら、ね。「面白み」を求めるなら、それはクラブ・チームにすべきだと思う。いくら、優秀な選手が集まろうが、クラブ・チームほどの練習時間がとれないナショナル・チームで、コンビネーションを高めていくことは難しい。今や名将の一人に数えられるアーセナルのヴェンゲル(ベンゲル)が、ナショナル・チームに魅力を感じない理由の一つはそこにある。それに、ほかの強豪国だって、ナショナル・チームがそうそう面白いサッカーをやれているとは思えない。ユーロから進化を続けるポルトガルは面白そうだけどね。
 ふだん、サッカーに興味がない人たちも観る代表の試合は、とにかく勝つこと!ワールド・カップに出場してシーン全体を盛り上げて、スポンサーさんをがっちりつかむこと!そんな中で、サッカーに興味をもった人たちが、あらたにサッカーを好きになり、クラブ・チームに目を向けるかもしれない。そこでサッカーの面白さに気づいてくれらば良いのではないのだろうか?
 逆にクラブ・チームのサッカーは、面白くなければ、と思う。なぜなら、クラブ・チームは(距離の問題ではなく)いつも傍にあるわけで、百戦して百勝できるものでもなく、サポは多くの敗戦に付き合うことにもなるわけで...仮に負けたとしても、おもしろければ次も観ようという気にもなるし、しょぼい勝ち方を続けていたら、だんだん飽きていくわけで...。
 さて、話は変わるがその北朝鮮戦前夜、メディアはいろんな盛り上げ方をしていたけど...。笑ったのは、いわゆるオヤヂ系新聞で、あるコメンテイターが、「日本のサポーターは、北朝鮮サポの挑発に乗らないように!」とか言ってるのが笑えた。だって、そのコメンテイターこそが、挑発してるんだから。サッカー好きな人ほど、「勝ち点3」をとるか、とれないか、そこに集中していたと思うし、現実に、「無事」に、試合を終えたよね?「勝ち点3」が欲しい日本のサポが、ホーム開催のゲームで無茶なことをするか?下手すりゃ没収試合になるのに。オヤヂ系新聞の諸子より、日本のサッカー・サポは、よほど「大人」だと思うよ。
 だからと言って、「スポーツと政治は別」とまで割り切る気はないけどね。やっぱり、なんだかんだとつながっているものさ。なればこそ、スポーツを政治に利用しようという連中にはウンザリだけど。
 その北朝鮮、偶然かどうかはわからないが、「核兵器保有宣言」なんか出してきたけど、それに日本の政治家やメディアが意外なほど冷静に対応したことにホっとした。実際どうだかわからんし。この件に関しては、いろいろ思うことがありますが、注視しつつ、今後も触れていくつもりです。