短気集中連載『ラジオと僕』その二 佐野元春編

 中学校二年生ぐらいかなあ、AMの、にっぽん放送系列で、『ミュージック・イン(・ハイフォニック)』という音楽番組が、月〜金の帯で、夜10時〜10時半に放送されていました。毎回、テーマを設けてはフルコーラスでじっくり聞かせてくれるありがたい番組で、そこで佐野元春さんの名曲、『SOMEDAY』と出会いました。その曲には、それまでに感じたことのない衝撃を受けました。イントロでは、街の雑踏のSEがあるのですが、車のクラクションが鳴った瞬間、見たこともない世界が広がったように感じたものです。(実は、このクラクションは、ニューヨークのタクシーのものであり、そりゃ日本で聞いたことねえや、と感じたのは当たり前でした。後に、最初の海外旅行は、できればニューヨークに!と思ったのも、これがきっかけです)
 後でわかった話をもう一つ。この曲は、当時隆盛を極めたYMOなどのテクノミュージックに「対する」意味も込め、あえてアナログちっくな音質で制作されたそうで、僕が聞いていた小さなトランジスタラジオでもビンビンに感じられたのも、まったくもってうなずける話です。(なお、佐野さんの曲との出会いは、小6のときに親戚のあんちゃんのカーステで聞いた『悲しきレイディオ』であったことも、後でわかりました)
 そして、中3のとき、親が念願のFMラジオ付きWカセット(死語?)をプレゼントしてくれたのですが、そこではじめてステレオ音源を知るのです。で、はじめてはまったFMラジオの番組はもちろん、NHK-FMの「サウンドストリート 月曜日 もとはるRADIO SHOW」でした。
 ところが、佐野さんの番組だから、佐野さんの曲ばかりと思っていたら、あくまで佐野さんはDJで、流れる曲はほとんど洋楽。今ではあたりまえの「インディーズ」ということばも、ここではじめて知りました。
 楽しかったです。クラブ(剣道部)で疲れ果てて、宿題をなんとかやっつけて、佐野さんの番組を子守唄のように聞きながら眠りに落ちていく...
 でも、残念だったのが、ようやく僕が洋楽に興味をもちはじめたころに、その番組が終わってしまうのです。最後に二週間は、「もとはるレア・ライブ・テイク集」。ホーンセクションと、ピアノだけのシンプルなバージョンの『ロックンロール・ナイト』が忘れられません。最後に佐野さんが選んだ曲は、映画『カサブランカ』の主題歌『As Time Goes by 時の過ぎ行くままに』は、今での僕のお気に入りです(イングリッド・バーグマンも好きやけど)。

旧日記「つらづら草」より転載