奇蹟の積み重ね

 柏スタジアムの一件から、今年の鹿島アントラーズの闘いをどこかさめた感じで見ていた僕だったが、前節の対大分トリニータ戦、ある願掛けをしていた。
 小笠原満男を負傷で欠き、勝ちきれない試合が続く中で、アウェイの地で、難敵シャムスカ大分に勝ち切ることができるのなら、(サッカーとは関係ない別のことで)奇蹟が起きるような気がしていた。
 祈りを込めてブラウン管を見続けて、勝利の笛が鳴った瞬間、得点をあげ、そして身体を投げ出してまでしてゴールを死守した内田篤人はその場にしゃがみこんだ。
 まるで、満男のようだった。満男は、誰よりも走り、誰よりも闘い、そして勝った試合でも、誰よりもへとへとでしゃがみこむくらい、どの試合でも全力を出し切っていた。

 でも、そうはうまくいかないのが人生。。。

 今節、かつて「ナショナル・ダービー」として覇権を競ったジュビロ磐田を聖地に迎えた。
 いまの僕の立場で、かの地に向かうことは適わない。

 多くの人はアントラーズが有利と思っていただろう。でも、磐田は磐田。それに僕は、前田遼一を高く評価している(惜しむらくは怪我がちだが)。

 前線からのプレスからめたインターセプト、速攻・遅攻、流動的なポジションチェンジや左右のサイドバックによるアタックなど多彩な攻撃で押しに押しても得点できず、勝ち点「1」をとりにきた磐田に逃げ切られるやにみられたが...ロスタイム4分の掲示で、マルキーニョスが48分53秒にフリーキックをもぎとる。相手の守備隊形が整う前にすばやく蹴り込んだ増田誓志のボールを、磐田ゴールに突き刺さったのが49分10秒...岩政大樹が吠え、いつしか降り出した天気雨が試合後の鹿嶋の空に虹を描いた。

 他サポから羨望を受けそうなその光景。
 やはり、鹿サポで良かったと思う。

 そしてもう、願かけは止めよう。

 そのとき、そのときで全力を尽くし...もう、それしかないじゃないか!