3分の2冠sへ…

どのチームにも勝たなければならない理由があった。
大メディアはACL制覇の浦和レッズを中心に躍り続けたが、そんな単純な構図の今年ではなかった。
国内主要タイトル3冠のうち、シーズンを制覇したのは我らが鹿島アントラーズヤマザキナビスコカップガンバ大阪。このチームは天皇杯をとることで、国内主要タイトルの3分の2を制することになり、その存在を強く知らしめることができる。川崎フロンターレナビスコACL惜敗のあと、再びモチベーションを上げて、チームを立て直し、底力を見せた。そして「タイトル奪取」という最後の仕事にかける。サンフレッチェ広島は、その理想を貫く姿勢と裏腹に、J2に行くことになった。だが「代表」の縛りから解き放たれ、天皇杯に入って遅まきながらも実力を示しはじめ、彼らを支え続けたサポーターにタイトルをプレゼントすべく奮闘し続ける…。

サンフレッチェ広島ガンバ大阪
若干蒸しっとくるピッチで広島がいきなり先制。前半ラスト際に運動量が落ちるが、見事な追加弾…が、そこが甘さかすぐに失点。
広島はこの日も後ろからつなぐサッカーで、ストヤノフセンターバック陣のオーバーラップも見ていて楽しい。一方、ガンバはボールをつなぐも、最後の詰めが甘い…もちろん、そうさせない広島の懸命なディフェンスがあった。家長投入も、投入しただけで、結局西野監督は家長が入ったときの戦術をデザインしきれなかったのだろう。柏木中心に広島は時間を稼ぎをはかり、気をゆるめたすきに決定的な3失点目…ただ、柏木は累積で決勝戦には出られないのだが…。

鹿島アントラーズ川崎フロンターレ

シーズン終了時でも良好な状態であったチーム同士、国立競技場で緊迫した死闘が演じられた。
キックオフ時から、小笠原満男の研ぎ澄まされた感覚がピッチを支配する。逆に、岩政大樹は気負いすぎだ。だが、ぬるくゲームに入るよりは、気負い過ぎるくらいが良い。この日はそんな試合だった。
ピッチの至るところで繰り広げられる球ぎわの激しいバトル。繰り返される制空権争い。スタンドまで骨がぶつかり合う音が聞こえるほどではなかったか?
両者の集中した護り、そこから生み出される攻守の切り替え…これがJリーグなんだよね。
「攻撃シーン」だけを切り取れば、川崎が押していたゲームのように見えるかもしれない。だが、アントラーズはパッと見ほど押し込まれていたわけではない。ボランチ青木剛が最終ラインに吸収されていない時は、守備ブロックが形成され、機能しているときだ。
こんなシーンもあった。青木が中盤で見事なタックルをかましてボールを奪ったのに、主審にファウルをとられた。そのときに青木は全身で悔しさを現したが、彼はいま、そのくらい自分のプレーに自信をもっている。かつて「永遠の未完の大器」と揶揄され(俺か?)、「中盤をさ迷ってる」と酷評された(これも俺か?)姿はもはやない!

また、変わったと言えばひ弱なイメージがあった本山雅志だろう。この日も攻守に奮闘し、決勝点となる見事なダイレクト・ボレーを叩き込んだ。もしもポンテでなければ、彼がMVPだった…てか、なんでベスト11じゃないんだ?

さて…この日は中村憲剛があまり上がってこなかったのは助かった。バランスを見て後方にいたのだと思うが、同じ後方に控えるのでも、小笠原満男のそれは「先の先」を見通してのポジショニングだったように思える。

この試合、他にも見所満載。
そして、ほんとうに勝って良かった。僕は川崎フロンターレって、結構好きなんだけど、タイトルとらせちゃだめなんだよ。ああいう強いチームが「タイトルをとったことがある」という経験を積み重ねると、その強さが本物になる。だから「強豪」と呼ばれるチームは、簡単に負けちゃいけないんだ。

元旦の決勝戦サンフレッチェ広島…柏木がいないことで、守備時の焦点が、かえって絞りにくくなる。だが、一戦必勝!アントラーズはどんな相手だろうと、そしてサッカー自体をなめることはない。総力をもって、サンフレッチェ広島に「挑む」!