大英帝国が蒔いた火種

2002年03月30日

あの全米テロ事件から半年が過ぎた。いまだ、米軍がアルカイーダのビンラディンを捕捉できていない。そもそも、アメリカが他国であるアフガニスタンに軍隊を送った時の大義名分は、彼の殺害、拘束であったはずだ。それが果たされず、その一方では多くの市民が生命を落とした。アメリカの市民がテロで殺されたことが許されないように、アフガニスタンの民衆が殺されたことも許されるべきことではない。
 そのアフガニスタンで、「その後」に支配権を確立した諸勢力は、麻薬の原料となる「ケシの花」の栽培を再開したそうだ。外貨獲得のためにね。そもそも、アフガニスタンが「ケシの花」の「名産地」になったのは、「冷戦」時代、ソ連軍がアフガニスタンに侵攻したときに、「抵抗勢力」の資金源とするために、アメリカのCIAが教えたとのことだ。タリバンが、政権を握ったときは、「ケシの花」の栽培を禁じていたそうだけどね。その時代の統治は厳格であったそうだが、その厳格さは平等に発揮されていたというわけだ。だが、そもそも、最初にこの地域に干渉した「列強」国は、大英帝国だ。
 その大英帝国が蒔いた「火種」の一つが、今、暴発しようとしている。否、すでに燃え上がっているか...第一次大戦の苦境を乗り越えるためとは言え、一つの土地を、アラブ人と、ユダヤ人と、両勢力に保証してしまったために起こった「聖地」の奪い合い。
 PLOアラファト議長の庁舎を急襲したくせに、アメリカに「議長の生命を奪うことも拘束することはない」とのたまうイスラエルは笑わせてくれる。発電機も破壊し、外との連絡を携帯電話でしかとれないなら、電池が切れるのも時間の問題。外部の指揮を執れない「議長」は、職務的には死んだも同然。
 アラファト議長も、パレスチナの諸勢力を完全に統率していたわけではなく、各勢力が今まで以上に暴発する可能性も有る。また、逆に、議長を見殺しにする可能性も有る。  
 はっきり言えることは、アラファト以外の窓口が存在しない(アラファトは明確なNo.2を指名していない。それはアラファトが自分自身の生命、立場を守るためだとも言われている)以上、それを封じたイスラエルの行動は、この地の問題を平和的に解決させることとはもっとも遠い道を選んだことになる。
 そして、もう一つ、はっきりしていること。また、多くの生命が、「無駄に」死んでいく...
旧日記「つらづら草」より転載