さよなら宇宙学校
来週に「さよなら宇宙学校」のサブタイトルで最終回を迎えるドラマ、「ふたつのスピカ」(http://www.nhk.or.jp/drama8/spica/)が素晴らしい。
残念なことに、視聴率は低迷しているようであるが、ストーリーの中核を担う若き役者陣、桜庭ななみ(鴨川アスミ役) 、中村優一(鈴木秋)、大東俊介(府中野新之介)、足立梨花(宇喜多万里香)、高山侑子(近江圭)らが今後キャリアを積み重ねていく中で、このドラマは文字通り、彼らの「母校」となるのだろう。
僕は小学校のときに一度転校しているので、「母校」という意識は若干薄い。
逆に、中高一貫教育で六年間を過ごしたT校への思いは強いかな。
大学でも濃密な時間を過ごせたけど、卒業のタイミングがみんなバラけてしまうからね、ちょっぴり印象薄まってるのかも。
その在学中に一ヶ月だけ過ごしたEILがらみで留学した語学学校は思い出深い。<卒業>式で泣いたのはあの時だけかも。
世界中から集うのだから、お互い再び会える可能性はそうとう低いんですよ。その学校でのお別れの挨拶は決まり文句があって。。。「See you somewhere, someday !」って、手を振るんですよね(いまだったら、Webが充実してるから、連絡とりやすいのでしょうけど)
あと、半年間だけつとめた前職でも、約一ヶ月に渡って研修を受けたけど、そのときの雰囲気も(良い意味で)学校っぽかったなぁ、と。
「ふたつのスピカ」は、宇宙パイロットを目指す、青少年たちを軸に物語が進む。そこにはある夢は、本上まなみ演じる「先輩」宇宙飛行士が「努力した、才能もある、それでも掴めるかわからない。だからそれを夢というの」と評するほど、厳しいものだ。
そして、狭き門をくぐり続けるには、そこに競争という名の現実がある。以下は、 第四話にて、田辺誠一が演じる鬼教官、佐野貴仁が学校(というより、もっと「上」)の方針に納得がいかず、学校を去るときに教え子たちに送った言葉を以下に引用する。
「夢や憧れを持つことは素晴らしいことだ。だが、その夢や憧れが大きければ大きいほど、リスクも大きく、実現させるのは難しい。だから負けないでほしい。周りと思いっきりぶつかって、強くなってほしい。残念ながら、ここにいる全員が宇宙飛行士になれるわけではない。ただ、今、自分たちの周りに、本気でぶつかりあえる、夢を語り合える仲間がいることを誇りに思え。そして、そんな大切な仲間に、容赦なく勝て。以上。」
このシーンにおける圧倒的なリアリティは、練り込まれた脚本、田辺誠一の渾身の演技、そして<容赦ない競争世界である芸能界>に身を置く若き役者たちの現実と重なり合い生まれでた。
幸いなことに、と言うべきか。私の高校において、そこまでの競争は無かった。なぜなら、誰しもが夢をもち、その夢が多様であるために、たたかう相手がクラスメイトでは無かったからだ。
過酷な宇宙学校において、抜群の成績をおさめながらも病に倒れ、宇宙への扉を目前にして閉ざされようとする状況にて、鈴木秋は妹に語る。
「夢をかなえる近道を教えてあげようか。同じ夢をもつ友だちをつくること。そうすれば、夢に近づく」
起承転結で言うならば、「転」に当たるであろう昨夜の回は、「ドラマ」としての塊感には欠けるものの、名場面満載だった。
突然の展開に、混乱し、困惑するアスミ。
傷つき、迷う生徒たちの背中を押すべく、精一杯ことばを紬ぎだそうとする大人たち。(とくに、ゴルゴ松本(TIM)の檄が素晴らしい)
府中野が贈ったプレゼントで、病院の天井にプラネタリウムの夜空を映し、仰向けになってその星たちに手をのばす秋の想い。
ここ最近稀にみる、<ド直球>だけど<やんちゃ系ではない>「青春群像劇」。
忘れかけていた「初心」を思い出させてくれる、そんなパワーがこのドラマにはあると思う。