『天空の蜂』東野圭吾

 最初の100ページくらい、たりぃなぁ、とか思ってました。フライ・バイ・ワイヤの説明とか、冗長過ぎやしないかい?とか。それでも、刑事さんが出てくる辺りから、読みごたえを感じてそれからは一気に。また、人物描写がドライなおかげで、ドロドロが苦手な僕としては読みやすかったです。だからといって、人物設定が軽い、というわけではなく、ちょっとした表現でうまくあらわしてるな、って感じです。
テーマ的には…僕が触れる作品にはよくありがちな(苦笑。てか、この作品自体けっこう以前の作品なのだけれど)…原発は出てこないけど、良い例としては、根津甚八竹中直人が参加したアニメーション『機動警察パトレイバー劇場版2』*1、つまんなかったものでは実写『亡国のイージス』とか。「平和ぼけの日本人に…」というテロリズムを止めるべく…というストーリー。この手の作品に違わず、終わったあとのほろ苦さと、やりきれなさが胸に痛い。とくに、この『天空の蜂』では、事件と同時進行で、その事件にピンときてない人たちの心情が描かれているのだが、それがなんとも言えなくて...。また、ピンときてないと言えば、事件勃発直後の関係者の鈍さが描かれているのだけれど、ここんとこ報道されていた電力会社の隠蔽体質を思うに、しゃれにならんと思う。そもそも、この『天空の蜂』って、「もんじゅ」のナトリウム漏れ事故の前に書かれたものだそうで...。そして…どんな事件も思いの外はやく、みんな忘れていく…否、みんな忘れたいんだよね…
 ところで、友人に薦められたあと、ネットで『天空の蜂』を検索すると、一発目で表示されたのがこのWEBぺージ*2で、簡潔で購読意欲をそそる、良いレビューでした。著者が、高速増殖原型炉をはじめとする核エネルギー発電に関してニュートラルな態度をとるおかげで、読者としては自分自身で考える「隙間」を与えられるわけですよね。そういう現実的な問題はあれど、基本的には(良い意味で)エンタテイメント性あふれる小説なので、読みやすい文章ですし、僕からもご一読をおすすめします!